長岡鉄男設計 スピーカー D-83「フラミンゴ」製作過程と写真

2005年の再掲で、2005年に制作した時の記録です。もう十年経ち、少しコーンも変色してきましたが、問題なく鳴っていて、今もテレビ等を含めたメインスピーカーにしています。

1988-9年頃に制作した「スワンa」(D-101a スーパースワンの初期型)のことも若干触れています。
音道の中などは写真を撮る前に完成させてしまったりすることが多いので、今でもそれなりに参考になるのではないかと思います。


ユニットは今だとFE83En
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http://www.fostex.jp/products/fe83en/
http://www.soundhouse.co.jp/products/detail/item/138975/
http://www.yodobashi.com/ec/product/100000001001155195/index.html
http://www.amazon.co.jp/dp/B002Q9MRG8/
を使うのが一般的と思います。これを作った頃は実売2500円くらいだったのが、今では4000円以上に値上がりしているようです。
低音は出なくてもいいというのであれば、安い箱も売られているようなので、
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http://www.amazon.co.jp/dp/B00570CFM4/
そういうのでもかなりの高音質が楽しめます。
限定生産ユニットのFE88ESは、現在まで再発売はないようです。オークションなどで手に入れられたとしても、発売から十数年経ち経年劣化しているでしょうから、あまりおすすめできません。


制作についてはこちらのようにさらに詳しいページも最近では出来てきましたが、ここまで精密な制作は、一般人の日曜大工では難しいと思います。平らな板を購入し、ホームセンターで板切りをしてもらえば、おおむねボンド接着のみ、部分的に釘を打つ程度で問題ないと思います。接着時に重石などを乗せられれば(重い本などで充分です)、なおよいです。

パネルソー(自動電動のこぎり)で切ってもらうと、切断面が非常に平らなので、それほどの固定は必要なく、ボンドでも充分な強度が得られるのです。釘やホゾでの固定は点の固定なので、面の固定の接着剤よりむしろ弱くなります。


(2015/11/29 追記)
シナ合板とラワン合板の違いですが、シナ合板は表面の薄板(1mmくらい)にシナノキというきれいな木材を使っているのに対し、ラワンは表面もラワンのザラッとした木を使っているというだけの違いで、内側に使われている材は同じラワンで、強度的・音響的にも変わりません。
長岡氏は設計書でシナ合板を指定していますが、どちらでも問題ありません。実際スワンの仲間の「クレーン」、「コブラ」などはラワンを指定しています。
木目を生かす仕上げにする場合はシナ合板の方がよいですが、ペンキなどで木目を消した仕上げにする予定ならラワン合板の方が安上がり(だいたい半額くらい)です。
シナ15mm厚サブロク(三尺x六尺 910x1820mm)材はあまり売れないので、大きいホームセンターでないと置いていない事が多く、取り寄せ入荷待ちとなることが多いです。私もスワンを作った時は取り寄せました。
大きさ厚さが同じなら他の材でもかまいませんが、単板は乾燥すると反るのでベニヤ合板にした方がよいです。




図面は
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『こんなスピ−カ−見たことない(Ontomo Mook Audio) 長岡鉄男のオリジナル・スピ−カー設計術2 図面集編 / 長岡鉄男 音楽之友社 1997/10』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/427696041X/
によります。

寸法は異なりますが、以下の製作過程についてはフラミンゴに限らず、スワン族の製作全般に当てはまると思います。音道もほぼ同じです。
むさくるしい部屋の写真ですみませんが・・・
以下、板が曲がって見えるところがありますが、カメラのレンズの問題で、実際には真っ直ぐです。





音道の一番手前側の部分です。上下に二つを重ねています。下側から見たところで、真ん中の二枚の板は下が4センチ、外側の二枚は上に5センチ開いています。
横に写っているのが作りかけの首の部分です。
図面には縦仕切り板の間隔が書かれていないのですが、横仕切り板の角の切り込みの長さから判断して、
一列目が

 42  15  30  15  56  15  30  15  42 

二列目が

   70    15    90    15    70   

となります。長さを測り、鉛筆で線を引いておきます。
(幅260。|15|は板厚)





下の段は側板まで付けた状態、上の段は音道を完成させた状態です。
仕切り板の角にある切り込み4ヶ所は、自分でノコギリを引いて切りました。ここはわざわざDIYで切ってもらう必要はないと思います。
スワンの音道も、基本構造はこれと同じです。


首の部分もすでに完成してます。本来は数日乾燥させてからユニット(FE-83Eを使用。FE-83の後継モデル)を取り付けたほうが良いそうですが、せっかちなのでもう取り付けて音楽を聴いていました。

首部分のみで使っても、上下逆向きにすると穴から低音が少しは出るので、極端にスペースの狭い場所で使うにはこれでもけっこういけます。
ターミナルをつけるのがめんどくさいので、ケーブルはユニットに直にハンダ付けしています。





側板を付け、あとは底板と天板を付けるだけの状態。下の段は上から、上の段は下から見た音道の様子です。音道の折り返し部分は、カンナを持っていないのでカッターで大雑把に削りました。別に削らなくてもあまり違いはないのかもしれませんが。


この側板を付ける作業が一番大変だと思います。中の仕切り板がずれていると、ここで側板がピッタリ合わない事態となります。
そうならないように仕切り板が正確な位置についているか、差し金できちんと直角を測るなどしてきちっと作る必要があるのですが、私の場合もやはり少しずれてしまいました。ヤスリで削り、最終的にはピッタリ合いました。





本来とは違い、首を逆向きに付け、低音が前から出るようにしました。天板、首はネジで取り付けているので、本来の形にも簡単に直せます。
長岡鉄男氏は推奨していなかった形のようですが、「方舟」のように極端な大音量が出せる空間を持っていない我々一般人が、普通の音量で聴く限りは、音が濁ったりすることはないと思います。特にフラミンゴの場合は低音が不足気味なので、この形の方が良いかもしれません。


天板は、接着してしまうと後で直しがきかないので、ネジ止め等にした方がよいと思います。天板裏からの首の固定もネジにすれば、首の取り外しが可能になり、引越し等の持ち運びの際便利だと思います。


木ネジをねじ込む時は、打つ場所全て(この場合4本)にまず釘を仮打ちして固定し、釘抜きで一本抜いては一本その跡の穴にねじ込んでいき、を繰り返します。いきなりネジを打つとどうしてもズレが生じてしまうのですが、釘で固定しておけばその心配がありません。最後にいったんネジを外し、木くずを削り取ってから再度ねじ込み完成、となります。

釘打ちは今回は最小限にし、基本的に外から見える場所には打ちませんでした。強度的には問題ないと思います。前回スワンを作ったときは、打ちすぎるくらい打ったのですが。


○板切りなど

板切りは東急ハンズでやってもらいました。図面を一目見て「スワンですか?」と言われました。だいぶ慣れていらっしゃるようです。
ただ最近は依頼がずいぶん減ったとのこと。10年くらい前は毎日のように依頼があったそうで、オーディオ趣味の衰退をちょっと感じました。

ハンズでは1カット52円で、標準的な値段だと思います(一般に50円くらい)。
ただし、フラミンゴやスワンaのように二枚同一板取りの場合、2枚重ね1カットで作業が出来るのにもかかわらず、カット代は一枚ごとの計算で、実際の作業の2倍取られてしまいました。総額5000円前後でした。
2枚重ね1カット計算のDIYなら、この半額程度でやってもらえるのではないかと思います。ただハンズの人の方が、上のように長岡スピーカーに慣れているので、いい仕事をしてもらえるかもしれません。

円・角穴カットは200円前後と、少し高めです(これも他のDIYと一緒)。しかし自分で開けるのは相当苦労すると思うので、やってもらった方がいいです。
(キリで一か所穴を開け糸ノコを使うか、ドリルとノコが一体型になったような工具を使う。スワンの時は後者を買って開けましたが、ずいぶん時間がかかりました)


天板の重りを入れる穴は、美観を損ねるので開けませんでした。天板を外して入れればいいわけですし。この辺は好みの問題だと思います。
首下部周りの板は設計では縦長(100x70,115x100)ですが、美観を考え、切り口が横に来るように寸法を変更して切ってもらいました(100x100,85x100)。


○製作の際の注意など

とにかく音道が迷路のように複雑なので、初めて作る人はまず、厚紙で模型を作ってみたほうが間違いがないと思います。私も以前にスワンを作ったときには音道の模型を作りました。
要するに真ん中のデッドスペースを除き、密閉された空間が出来ないようにして「道」として空気が通るように設計がされているわけです。
こちらの内部構造図がとてもわかりやすいです。
うっかり逆向きに板を付けてしまわないよう、気をつける必要があります。


○音

やはりスワンに比べると低音がやや不足ですが、個人的には充分です。前面開口にしたために余計響いているのかもしれません。個人的には、コントラバスのピチカートが自然に出る程度の低音があれば充分なので、それ以低の壮大な低音は、別になくてもいいかと。
またスワンのような低音が出ても、集合住宅住まいでは、それはそれで困りますから(笑)、特に集合住宅にお住まいの方にはスワンより断然おすすめです。隣人の苦情が出ない範囲での高音質を求める方には、ベストの選択ではないでしょうか。
高音域はスワンよりだいぶ伸びているようです。

FE88ES(スーパーフラミンゴ用。限定発売で入手困難)はどうかわかりませんが、中高音はFE83Eの方がよかったという声も見られるので、どっちもどっちかもしれません。個人的には中高音重視なので、今のままでいいかなと思います。


○費用

板7200円が2枚、カット代が5000円、ユニットが2500円×2で合わせて25000円ほどでした。この値段で買えるスピーカーでこの音は、ありえません。