大人がピアノを弾けて何になるのか

何にもなりません。ピアノで飯は食えない。ただの道楽。


しかし、では子供にピアノを習わせて何になるのか。就職の役にも立たないのに。まして莫大な費用をかけて音大に進ませて何になるのか。
ピアニストになる条件は「天才であること」と書いている人がいて、全く同感である。
http://music.geocities.jp/petroler/mrn54.html

音大などを卒業してみても、一般の就職もままならない。郷里に戻るにしろ、さらに大学院や留学の道を選ぶにしろ、いずれにしても最終的にいわゆるピアニストになれる見込みは99%以上ない。これだけははっきりしている。なぜなら、本物のコンサートピアニストになることのできる、まず第一の資格は「天才であること」であり、天才ならば小中学生の頃からすでに騒がれて、早くから頭角を現しているはずだからだ。だから一般的な音大生活を過ごして、なおかつ辛うじてピアニストになれたという人は、まったくのゼロではないかもしれないが、これもまた例外中の例外であって、それはもしかしたら天才に生まれつくことに匹敵するほど、確立[ 原文ママ ]としては低い事ではないだろうか。


音大に行かなければならない程度の才能の人は、そもそもピアニストにはなれず、非常に実力があるかコネのある人で音大の教員、かなり実力があるかコネのある人で学校の音楽教師、多くはピアノ教師で正社員程度の収入も見込めない。
(教員の世界は、かなりコネの力がモノをいう世界のようです。とりわけ客観的評価の難しい芸術系や、地方の教職は)
気の毒な方は家事手伝いという名のニート、というご時世である。「お嬢様だから良いところに嫁に」というのも、昨今期待できない。まして男子は。


ピアノにはオーケストラに入団するという道がない。つまり社会はピアニストを大勢必要としていない。極論すれば一流の現役演奏家は世界中で100人くらいいれば充分に足りる。かなりピアノ音楽に詳しい人でも、世界で100人の現役の名手を挙げられる人がどのくらいいるだろうか(現役である。過去の名演奏家は含まない)。
なら日本では10人くらいいれば充分ではないか。
となると世代交代を考えても数年に一人現れればよいのだから、同年齢で一番上手い人以外は必要ないということになる。


東京芸術大学に入るのは、東大に入るより難しい(桐朋などはよく知りません)。東大なら同年齢で上位3000番までに入っていれば入学できる(他の国立医学部に行く人、関西地元だから京大に行く人、留学する人なんかもいるから、もっと低くても可能か?)。
まして同年齢で一番になるのは、どれだけ大変なことだろうか。
そんなに努力するのなら東大に入ったほうが良いのではないか。東大ほどでない大学でも、就職は音大よりずっとましである。


子供にピアノを習わせるのもやはり「道楽」でしかない。
しかし大変良い道楽であることは確か。名曲を自分の手で弾くことができるという喜びは、何者にも代えがたい。


上記と並んで、「ピアノは孤独」
http://music.geocities.jp/petroler/mrn25.html
も考えさせられる。ピアノという楽器が他の楽器と比べていかに特殊かよくわかる。
本当に子供をピアノ漬けにすることはよいことなのか。
学業の合間に楽しく習わせ、就職につながる進学先を選ばせ、就職してからも趣味で続ければればよいのではないか。


プロになるというのは、やりたくないこともやらなければならない、ということでもある。好きでもない曲を聴衆の人気取りのために嫌々弾く、下手くそなレスナー(私を含め)の音を朝から晩まで聴いて指導する、など。


☆ピアノ関係の記事一覧
中途でほったらかしている記事もあるが・・・
ベートーヴェンの中級者向けピアノソナタについて
http://d.hatena.ne.jp/nenemuu/20130203
ソナタ形式のアナリーゼ(楽曲分析)
http://d.hatena.ne.jp/nenemuu/20121022
大人レスナーへのピアノ入門法私案 その2 薬指の動かし方など
http://d.hatena.ne.jp/nenemuu/20121015
大人がピアノを練習するということ
http://d.hatena.ne.jp/nenemuu/20121003
大人レスナーへのピアノ入門法私案 その1
http://d.hatena.ne.jp/nenemuu/20121002
バッハ「インヴェンションとシンフォニア」の練習の進め方について
http://d.hatena.ne.jp/nenemuu/20120929