インヴェンション尽くし(バッハ「インベンションとシンフォニア」の楽譜の比較と選び方)

(2015/8追記)
アマゾンがリストマニアを廃止するそうなので、こちらに転載します。はてな向けに編集するのすごいめんどくさい・・・
はてなの不具合でリンク画像が表示されていないものは、番号がそれぞれのISBNかアマゾン商品コードなので、この番号をググってみてください。
リストマニアは字数制限が非常に厳しかったので、切り詰めて書いてますが、そのうち暇があればもう少し詳しく書くかもしれません。


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J.S.バッハインヴェンションとシンフォニア 全音ピアノライブラリー

通称、市田版。一番おすすめです。原典版と解釈版の良いところを併せ持っています。 以下の楽譜の他にも、国内解釈版、輸入楽譜など、まだまだあります。よく考えたら、これほど多くの種類が出ていて、しかも内容が多様な楽譜は、インヴェンションくらいかもしれません。芸術性の高さ、誰もが手にとる、練習効果の高さ、難しすぎない、自筆譜の情報の少なさ、などの条件が重なっているからでしょうか。


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バッハインベンション 全音ピアノライブラリー

通称、ツェルニー版。一番ロングセラーのようですが、解釈版で古いのでイマイチです。解釈版と割り切れば、それなりに使えます。念のため書いておくと、これを含め、「インベンション」という楽譜にも、「シンフォニア」はセットで収録されています。「インヴェンションとシンフォニア」のことを「二声と三声のインヴェンション」とも呼ぶためです(紛らわしいですね)。ただし別売りのものは、以下特記しています。


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インヴェンションとシンフォニア ウィーン原典版 42

ウィーン原典版。定評のある原典版ですが、解説が直訳・学術調で少し読みにくいです。解説なしの本も出ており、安いので、他の本と併用する人にはそちらの方がおすすめです。


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Inventionen und Sinfonien BWV 772-801

ヘンレ版。有名な原典版ですが、やや古い気がします。洋書で、日本語の解説はないので学習に苦労します。少なくともバッハに関しては、必ずしもヘンレ版にこだわらなくてもよいと思います。平均律のように近刊(2007)の本もありますが。


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バッハ/インヴェンションとシンフォニア (ハンス・ビショッフ校訂)
通称、ビショップ版。解釈版で中途半端のような。全音だけでこんなにいっぱい・・・市田版がよく売れるため、店などでは売れ残ったこの本やツェルニー版ばかりよく見かけますが、おすすめできません。3冊の見た目がそっくりなので、間違えないよう注意。


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バッハ集 4 (井口基成 校訂版) (世界音楽全集 ピアノ篇)
通称、井口版。タイトルがわかりにくいですが、インヴェンションとシンフォニア、小プレリュードと小フーガを併録している楽譜です。解釈版としては定評があり、原典版と併用して参考にするなら使えますが、単独での使用はおすすめできません。
日本語ライセンス版 バッハ, J. S. 「インヴェンションとシンフォニア」 Bach, J.


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Inventionen und Sinfonien

ベーレンライター原典版。新バッハ全集をそのまま用いた、基準となる楽譜ですが、運指がありません。ゴリゴリの研究者か、運指を全部自分で考える人向け。


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バッハ インヴェンションとシンフォニア: New Edition 解説付 (標準版ピアノ楽譜)

2014年刊、野平一郎編。解説は技術より解釈に偏り、特に新しさのない楽譜という印象です。下の長岡版とどっちもどっち?


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標準版 バッハ インベンションとシンフォニア

通称、長岡版。原典版で、ヘンレ版を元にしています。意外によい楽譜ですが、ベストではないです。音友ではISBN4276413117という古いイマイチな楽譜も、店ではよく見かけます。


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原典版 バッハ インベンションとシンフォニア (ドレミ・クラヴィア・アルバム)

原典版。原典の来歴がよくわかりません。ヘンレ版でしょうか?


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バッハ/インベンションとシンフォニア(解説付)

原典版。同じく来歴不明。ヘンレ版? 解説は詳しいです。


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日本語ライセンス版 バッハ, J. S. 「インヴェンションとシンフォニア/ブゾーニ版」 Bach, J. S.: Inventionen und Sinfonien/B

ブゾーニ版。解釈版と割り切ればなかなかかも。


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園田高弘 校訂版 J.S.バッハ インヴェンション BWV772−786

通称、園田版。「原典版+薄字の解釈」という書き方がされており、原典版の記載が区別されています。インヴェンションとシンフォニアで別巻なので注意。


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バッハ インヴェンション 分析と演奏の手引き 分析:小鍛治邦隆 演奏の手引き:中井正子

解釈版。解説、分析が最も丁寧な楽譜。解釈版の楽譜の上に分析が記載されています。演奏に使うにはやや煩雑です。インヴェンションとシンフォニアで別巻なので注意。


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バッハ演奏へのアプローチ バッハ インヴェンションとシンフォニア

解釈版。全ての音に運指が付いています。どうしても悩む人なら参考にしてもよいかも。その他国内書店から出ているものには、千蔵八郎編、イェルク・デームス編などもありますが、高いです。


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バッハ・インヴェンションとシンフォニーア

楽譜ではなく、詳細極まりない研究書ですが、レスナーがこれを読む必要はないような。


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Two & Three Part Inventions and Sinfonias
個人的には、ピアノ練習用として「これだ」という演奏が、どうも見当たりません。チェンバロなどを含め色々な演奏を聴いてみた方がいいと思います。これは圧倒的な名演で、必聴ですが、学習には向かず。模範的な演奏はシフでしょうか。初音ミクが歌った演奏なども動画サイトにはあり、
http://www.youtube.com/watch?v=60H3ZDHLhZc
それはそれで素晴らしいです。


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鍵盤音楽の領域vol.3
インヴェンションと小プレリュードを、チェンバロ、オルガン、クラヴィコードで演奏。古楽器の響きと演奏がすばらしい。もっと聴かれてほしい。


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プレインベンション J.S.バッハインベンション-のまえに

インヴェンション学習の前過程として有名ですが、バッハの曲はあまり収録されていないので、芸術性は今ひとつです。バッハの小曲集の方がおすすめです。以下インヴェンションではなく、関連楽譜。


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バッハ クラヴィーア小曲集 解説付 (市田編) (Zenーon piano library)

バッハ小曲集も、編集は市田版が良いですが、これに収録されていない曲もあるので、収録曲で選んだ方がよいです。有名なメヌエットト長調BWV Anh.114は、バッハの曲ではなく、クリスチャン・ペツォルドという、バッハの友人の作と判明しましたが、名曲には違いありません。


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J.S.バッハ小プレリュードと小フーガ 全音ピアノライブラリー

小曲集のうち、音楽性ではこれが一番好きです。解釈版で、解説も直訳調なのは今ひとつです。ただし小曲集は、そんなに原典版にこだわらなくてもいいと思います。


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バッハ アンナマグダレーナのためのクラヴィーア小曲集改訂版 装飾音奏法付 全音ピアノライブラリー (zen-on piano library)

これもよく使われます。市田版と重複している曲もあります。2012年に改訂され、より信頼できる内容になりました。ウィーン原典版から出ている同曲集は、非常にマニアックな編集ですが、練習用としてはどっちもどっちです。


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アンナ・マクダレーナの音楽帳

ちょっと本題から逸れますが、イチオシの名盤です。ハープ、リュートヴィオラ・ダ・ガンバの三重奏と合唱という異色演奏です。上の楽譜の楽曲に加え、「目覚めよと呼ぶ声が聞こえ」「平均律1-1前奏曲とフーガ」など、いくつかの名曲も収録。バッハ家の音楽の一日は、こんなだったのかな。教材にはなりませんが。


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バッハ 平均律クラヴィーア曲集1 (市田編) (Zenーon piano library)

やはり最終目標はこれでしょうか。これも市田版が素晴らしい編集で、バッハへの愛が感じられます。難曲のイメージがありますが、実は前奏曲1番以外にも、中級者が挑戦できる曲は、特に前奏曲には、結構あります。また前奏曲は練習曲としての効果も高いです(そもそもインヴェンション、平均律とも、バッハの息子のための練習曲です)。平均律の易しいフーガより、三声シンフォニアの難曲の方が難しかったりします。続く→


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ウィーン原典版(51) バッハ 平均律クラヴィーア曲集2

→続き。必ずしも伝統的な、インヴェンション→フランス組曲平均律という段取りを踏む必要はないと思います。二声インヴェンション→平均律前奏曲、三声シンフォニア平均律の難しくないフーガ、といった形で両者を並行して進める方法もありでは?(先生には怒られそうですが)。こんな芸術作品を上級者になるまで放っておくなんて、もったない。平均律第二集はやや難度が高め。市田版は未刊なので、これかヘンレ版がよいです。


☆ピアノ関係の記事一覧
中途でほったらかしている記事もあるが・・・
ベートーヴェンの中級者向けピアノソナタについて
http://d.hatena.ne.jp/nenemuu/20130203
ソナタ形式のアナリーゼ(楽曲分析)
http://d.hatena.ne.jp/nenemuu/20121022
大人レスナーへのピアノ入門法私案 その2 薬指の動かし方など
http://d.hatena.ne.jp/nenemuu/20121015
大人がピアノを練習するということ
http://d.hatena.ne.jp/nenemuu/20121003
大人レスナーへのピアノ入門法私案 その1
http://d.hatena.ne.jp/nenemuu/20121002
バッハ「インヴェンションとシンフォニア」の練習の進め方について
http://d.hatena.ne.jp/nenemuu/20120929