第3番

ワルトシュタインと同じハ長調で、豪壮な曲想が似ているので「小ワルトシュタイン」という人も稀にいるが、当たっている気がする。内容に乏しいという人もいて、特に展開部に工夫が足りないような気もするが、よい曲である。


初期ソナタだが、おそらく月光第三楽章よりずっと難しいと思われる。
初期だからと悲愴の次に手がけたが、難しく長いため非常に悪戦苦闘。
この曲に関する情報がとても少ないため、月光より難しいというのは月光を弾いてみて初めてわかった。


指が疲れる。悲愴第一楽章なども演奏時間はこの曲とそう変わらないのに、この曲はずっと疲れる。
おそらくハ長調であることが大きな理由。ハ長調のため、アルペジオ、和音など相当無理で指に負担のかかる音形が多い。脱力できていないと途中でバテてしまいがち。
私も最近は、この曲の第一楽章をなんとか通しで引けるようになったが、全楽章などとても無理。全楽章弾くピアニストはほんとに筋力、スタミナ、脱力ともすごいんだなと思う。


○難所
★提示部
冒頭三度のトリルからしてすでにこの曲の中の指折りの難所。13-24ではまずこの速さで弾くのは不可能だろうから、23-15または24-15などでとったほうがよい。

息を抜く暇もなく3小節左手10度も、これまた難所。右手スタッカートのためペダルでつなげられない。
ベートーヴェン自身の運指では1-5としているが、手の大きい人でないと無理。当時のピアノの鍵盤幅が狭かったからともいわれる。
私の場合は前にも書いたが、
左手は5でソだけを弾く→シは右手で弾く→直ちにシを左手1に置き換え音を保持する
というやり方で弾いている。これならペダルを使わず左手の音を保持できる。10度はギリギリ届くが他の鍵盤にかすってしまう手の大きさの人にはおすすめ。


5小節以降のポリフォニックな動き。
13小節からの右手アルペジオとオクターブトレモロ。指が疲労する。
56、60小節左手10度はアルペジオでとり、ペダルを使ってもかまわない。その他の10度もスタッカートなどないところはペダルを使えばよい。
61小節からの右手アルペジオ疲労するし白鍵ばかりなので指またぎしにくく、間の和音も外しやすい。


77小節からの両手ユニゾントリル。展開部、再現部でも同様なパターンが頻出。
私はここが一番苦手。ミケランジェリの演奏を聴いたら氏の演奏も微妙に左右ずれていたので、やはり難所なのだと思う。
指使いにはずいぶん悩む。特に黒鍵が入ってくるところ。基本は右手53左手12か? 右手53だとただでさえつらい5がさらに疲労する。


85小節両手オクターブトレモロで、88小節から左手が単音になるのは、当時のピアノの最低音がファだったから。ここから単音にするのがちょっと弾きにくい。現在のピアノなら最後までオクターブを弾けるのだが・・・


★展開部
98小節からのペダルは踏みっぱなしか? ハーフか? 踏まないでつなげるのはきつい。

109小節の第一主題3度トリルは展開部アルペジオ疲労した直後なので、うまく弾けないことが多い。
今まで23-15で弾いていたら24-15にするなど、疲れてない指使いをするなどするとよい。


115小節からのオクターブ跳躍、sfとスタッカート、音の伸びる長さなどややこしいので注意。ペダルを踏む場合はさらにややこしい。

135小節左手10度の和音は右手スタッカートのためペダルで伸ばせないので、何とか端折るしかない。私はシをオクターブ下げて弾いている。最低音ソは再現部前の属音固執音で再現部を呼ぶとても重要な音なので、必ず伸ばす必要がある。

147小節からのオクターブ跳躍も個人的にはかなり苦手なところ。


★再現部、コーダ
再現部の難所も大体同じ。
246小節からのポリフォニックな動きも個人的に苦手。
コーダ、カデンツァは派手だがそんなに難しくはないかも。
228小節から長さが四分音符から三連符に変わるのに注意。
ヘンレ版で232小節カデンツァ後半の上段のファは直前の音が#だが、その後の下段ト音でナチュラルが付いているし、音楽的にもナチュラルで取るのが自然。


こちらも参考になる。
ベートーヴェンソナタ;有名でない名曲たち
http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n67461


☆ピアノ関係の記事一覧
中途でほったらかしている記事もあるが・・・
ソナタ形式のアナリーゼ(楽曲分析)
http://d.hatena.ne.jp/nenemuu/20121022
大人レスナーへのピアノ入門法私案 その2 薬指の動かし方など
http://d.hatena.ne.jp/nenemuu/20121015
大人がピアノを練習するということ
http://d.hatena.ne.jp/nenemuu/20121003
大人レスナーへのピアノ入門法私案 その1
http://d.hatena.ne.jp/nenemuu/20121002
バッハ「インヴェンションとシンフォニア」の練習の進め方について
http://d.hatena.ne.jp/nenemuu/20120929