第17番(テンペスト)

第一楽章しか弾いていないが、月光第三楽章よりは技術的には易しい。
悲愴第一楽章とは、同程度かこちらの方がやや難しいか・・・一般に考えられているよりは、技術面では難しくないと思う。技術より表現上の課題が大きい。


第三楽章は有名すぎるのと一本調子なのとページ数が多いので、どうもなあ・・・とまだ手を付けていない(何でみんな第三楽章ばかり弾きたがるのだろう?)。しかし堂々としたソナタ形式の傑作には違いない。
第一楽章よりやや難しいと言われているが、どのくらい難しいかはわからない。
他にも書いたけど、3つの楽章全てがソナタ形式で書かれている特異な曲で、そのような曲はベートーヴェンピアノソナタには他にない。


○注意点、難所
難所というほどのところはあまり多くないような気がする。弾きにくいなと思うところは結構ある。主に注意点。


74小節以降のアルペジオと和音が左右交代するところで、アルペジオを間違いやすい。個人的にはここが一番難しい。
左右に視線を動かすか、いっそのこと弾きにくい左手だけ見て右手は見ないで弾くか。
視線を動かす場合は動体視力が問われ、歳とともに難しくなるかも。


20小節から右手で伴奏、次の小節で左手に伴奏を置き換えるというパターンが続く。通常片手で弾いてもう片方は交差するのだが、この部分は指を置き換えないと弾けない。
どうにか交差で弾けないかいろいろやってみたがダメだった。楽譜の運指も、よく見るとそうなっている。
交代しても伴奏を一貫して弱く弾くのが難しい。

38小節の減七の和音の指替えは特に難しい。瞬時に和音2つと伴奏2つの4つを押さえるポジションを取らなければならない。どうしても無理な場合は、大きな声では言えないが最初の和音のうち2などを一つ端折るとか・・・


同じ音形でも展開部では右手のみで伴奏し、左手を交差してメロディを弾く。
一般に、交差は左手で伴奏を弾き、右手を左右に動かすことが多いが、ここは右手で伴奏、左手で交差してメロディを弾く。楽譜上そうなっているし、運指もそのように書かれている。ベートーヴェン自身はここに運指を書いていないようだが。
左手伴奏も不可能ではないと思うが、53で和音を連続して弾くなど無理な形とならざるを得ない。やはり右手伴奏がよいだろう。
この展開部の伴奏も98小節以降、白鍵の狭いところを弾くような形で、12-4とトレモロのような形になるけど、音が揃わず音量のバランスが崩れやすく難しい。手首を揺らす感じがよいけど、なかなかうまく行かない。しかもメロディは左手なので伴奏は力まず弱く弾かなければならない。
再現部にはこのパターン(第二主題への移行部?)は出てこない。


122小節からの3度のユニゾンを、両手で揃えて弾くのが難しいし、指を外しやすい。
左手の出だしは4-5-23-5-12-5と、4の下を5でくぐると個人的には弾きやすいが、弾きやすいやり方で。130小節から3度が逆になるのに注意。


再現部142小節以降Largoの幻想的なところ、音の長さがとてもとりにくい。楽譜の読みがとても得意な人、リズム感のある人ならともかく、普通の人はわけがわからなくなってくる。
CDなどの演奏をよく聞いて頭に叩き込むしかないかも。


○余談
再現部第二主題189小節以降、最高音レが固執して続くところがなんとも緊迫感を出していて効果的だが、実は当時のピアノだとファが最高音だったので、提示部と同じくオクターブ進行だと音域をはみ出て弾けないという事情があった。それを逆手に取って音楽的効果を上げている。
同様の例はベートーヴェン10番第一楽章102小節、モーツァルト13番KV333第1楽章の再現部第2主題143小節、162小節、10番KV330第一楽章133小節などにも見られる。


ベートーヴェンの21番ワルトシュタインより前のピアノソナタは、ファ〜ファの5オクターブ61鍵の音域しかなく、この曲や月光ソナタも、たったの5オクターブで書かれている。音域が大きいほうがダイナミックとは限らないのは面白い。