第14番(月光)第三楽章

嬰ハ短調で黒鍵5つのうち4つを使い、しかも同じ調の(パクリ疑惑もある)幻想即興曲などと違い弾きにくい音形も多いので、とにかく黒鍵でツルツルずっこけ易い曲という感じ。黒鍵滑り止め対策が深刻に必要である。その代わり速いパッセージは弾きやすい調である。


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アトリックスのクリームがいいとか言われる。
それでも滑る人は紙めくりの滑り止め
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を使うという手もある。


○注意点
143小節右手はヘンレ版ではド#ミのみで、注釈でド#ミソ#もあり、としている。ウィーン原典版では譜面でド#ミソ#としている。
53小節からの頭のスタッカートはヘンレ版には全て付いているけど、ウィーン原典版では付いていたりいなかったり。


177小節からのアルペジオウィーン原典版では左手も使う運指にしているが、ヘンレ版では右手のみで弾くように書いている。前者はペダルを使うのが前提なので、個人的には後者の方が良いと思う。
もちろんペダルを使ってもかまわないが、使わなくても響かせられる運指というのが原則ではないかと思う。
どうしても届かなければ仕方ない。


#4つの曲で、ソナタ形式のため転調も多いので、ダブルシャープや白鍵に上がるシャープ(シ#=ドなど)も非常に多い。白鍵を弾くシャープは読み取りにくいので、個人的には○印を付けるとかしているけど、この曲の場合あまりにも多いのでそれは面倒かも。


○難所
やはり53小節からの「ズンチャッチャッチャ」が一番難しいというのが、弾いたことのある人の共通認識ではないだろうか。聴いた感じでは全然難しく聞こえないのが厄介なところ。後半スラーなのも弾きにくい。
「ズンチャッチャッチャ」ではなく「ズンチャッチャーラ」という感じ。スラーでつなげるところの指の負担が重いので、なるべく楽に弾く工夫を。


第一主題のアルペジオのパターンは、黒鍵をテコの力で弾く感じで、聴いた感じよりは難しくない。左手はトレモロをデロデロ弾くだけで楽なので、音量を抑えて下品にならないように。
7小節5-1の指替えが滑りやすい。展開部69-70小節にも同様の指替えがあり。
9小節の左手5で低音を保持するのも、手の小さい人にはきついかも。どうしても難しければペダルでつなげるか。
13小節以降、移行部のアルペジオはかなり弾きにくいパターンで、難所ではないかと思う。16小節5-1指替え、17小節から黒鍵の間の白鍵を弾くところ、19小節からは全て黒鍵なので支点が出来ず滑りやすい。


月光第三楽章は、手の小さい人が苦労する曲としても知られる。
32小節ソ(ファのダブルシャープ)のオクターブで上の黒鍵に上がりトリルというところが、手の大きさ的には最もきつい。薬指は上の方に上げて黒鍵の間あたりを弾くことになるが、このポジションだとどうしても、ソ#の黒鍵に薬指が引っかかってしまう。
親指は一瞬弾くだけで離し、あとはペダルで音をつなげるしかない。10度届く人なら楽なのだろうけど・・・
他の黒鍵から白鍵に降りるパターン2つは弾きやすい。127小節はド(シ#)だが、ドシの間には黒鍵がないので、薬指が引っかからず比較的弾きやすい。


58小節以下の9度プラス間の和音も、手の小さい人にはきつい。
59小節以下の10度アルペジオのパターンでは、手の大きさ的には届く人が多いと思うが、黒鍵を支点とする中指がズッコケやすい。13を同時に押さえながら、3は弾かず1をやや早く弾くという感じで弾いたほうがよい。


最後196小節からのユニゾンアルペジオも厄介。
出だし和音からのポジション替えで、左手ミはウィーン原典版、ヘンレ版とも5でとっているが、5だと手をずらさなければならないので、またいで4で取った方が素早くアルペジオのポジションにしやすいと思う。


○その他で、難所というほどでないけど、そこそこ難しい所は・・・
冒頭ソ#を左右で取り合うところでいきなりつまづく、という人が多いみたい。
こういうパターンは、もちろん打鍵のタイミングをずらすのも大事だけど、なるべく左右の打鍵位置をずらして、うまくすれ違えるようにするのが原則。個人的には右手1は下の方を弾き、左手は2でやや上の方を弾き、ぶつからないようにしている。左手運指は1としている楽譜もあるが、2の方が指が長く細いのでぶつかりにくく弾きやすいと思う。
ウィーン原典版は1、ヘンレ版は2で取っている。あれ、ヘンレ版の運指は意外によい?)
これは難所というほどではないと思う。ていうかこの程度を難所と思う方にはまだ早い曲では・・・


37小節から伴奏のリズムがとりにくい。
中間部、コーダで左手でメロディを弾くところ。
83小節の右手アルペジオ。ヘンレ版では1-5-24-5でとっていて、私もそうしているが、ウィーン原典版では24ではなく13になっている。手の小さい人は前者は難しいので後者がよい。どちらにしろ弾きにくく、二音がずれやすい。
88小節から右手で和音とメロディを弾くところで、右手小指が遠くスラーにしにくい。ペダルを使ってもよいが、まず指の角度を工夫するなどしたほうがよい。
92小節からの右手和音の連続は、慣れないうちはもつれやすい。
コーダ直前158小節の右手アルペジオも弾きにくくずれやすい。
163小節からの異様な音符は、減七でペダル踏みっぱなしでウワーンと響かせる所で、見かけほど難しくない。


○ペダル
ベートーヴェン自身が指示したのはアルペジオの最後の二音と、コーダの減七のところだけで、原典版ではこれらにしかペダル指示が書かれていない。
後はどうするかというと・・・解釈版などを参考にいろいろ工夫してくださいとしか・・・
月光は第一楽章踏みっぱなし説が定説になりつつあるし、かなり踏んでも良いのではと思う。