大人だまし

ハ長調で弾ける」「人差し指で弾ける」みたいな、素人向けに簡単にした本はお勧めできない。
年齢的にどうしても無理(70代以上など)という人でもなければ、正統的なピアノの上達コースを踏むチャンスは、まだまだある。60代以上でも可能かもしれない。


これらを私は、子供だましならぬ「大人だまし」と呼んでいる。
要するに指導者自身が大人の能力をなめている。大人にピアノが上達できるわけがないと見下しているのである。
彼らは自分と同じように、幼少からの厳しい努力を積まなければピアノは満足に弾けないと決めてかかっている。そうでないと自分の努力は無駄だということになるから、認めたくないのだ。
(ハノン、ツェルニー至上主義者にもこういった傾向がある。もしハノンやツェルニーが効果的な練習でないのなら、自分の今までの苦しい努力は何だったのか → そんなの認められない → 生徒にも自分が受けたのと同じレッスンを という思考回路である)


「大人のための」みたいのが増えてきたのは、1990年代以降の少子化による。それまではそもそも大人からではピアノは弾けるはずがないという風潮だったと思う。
もちろん大人には弾けないと決めてかかる昔よりは、よほどよいのだが。