スピッツ「けもの道」と堀江由衣「Chocolate insomnia」

<物語>シリーズ セカンドシーズン」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%80%88%E7%89%A9%E8%AA%9E%E3%80%89%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA_%E3%82%BB%E3%82%AB%E3%83%B3%E3%83%89%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%82%BA%E3%83%B3
つばさタイガー」の主題歌「Chocolate insomnia」(堀江由衣)のサビが、どう聴いてもスピッツの「けもの道」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E6%97%A5%E6%9C%88%E3%83%AD%E3%83%83%E3%82%AF
にしか聴こえない。

まあよく似た曲は多いのかもしれないけど、サビの2小節のメロディが全く同じなら、これはもうアウトではないのかなあ・・・


7/17
その後、想像以上の騒ぎになって、コピペブログやニコニコやネットニュースサイトでも取り上げられている。
やはり曲で一番重要な「サビ」で、しかも似ているというレベルでなく「全く同じメロデイ」というのは問題だろう。
これがサビでなければギリギリセーフだろうし、「似ている」だけならゴロゴロあるケースだし。音楽性もスピッツと違い、いかにもキャラソンらしくやっつけという感じだしなあ・・・
7/13の二回目も普通に放送されたし、スピッツ側と内々に話を付けて、公式には「似ている? 気のせいでしょ」で決着しそう。

これを期に、2000年代以降の曲やアルバムにも名曲があると知ってもらえればよいですね。スピッツというといまだにロビンソンとかチェリーとかのイメージが強いけど、けっこうヘビーなのである。

「楔(くさび)」はヒビを入れる道具です。 in俺妹

香織姉さんは、趣味も性格もばらばらだったみんなをつなぎ止めていた楔(くさび)のようなもので、

俺の妹がこんなに可愛いわけがない。」の二期、原作者自身によるサプライズも多く結構面白いのだけど、三話でこんなセリフがあった。上は原作9巻の168ページから引用。
ASIN:4048708139:image:small
http://www.amazon.co.jp/dp/4048708139/


69ページにも「理性の楔」という同じ間違いがある。
「楔」は木材とかに打ってヒビを入れる三角の鉄片のこと。つなぎ止めるのでなくヒビを入れる道具である。つなげるのは「鎹(かすがい)」。
「軛(くびき)」は家畜を繋ぎ止める道具。通常「理性の・・・」とくれば「理性の軛」で、「軛」が用いられる。
「子は・・・」とくれば「かすがい」である。まあ世には子が「くびき」にしか感じられない方々もいるのだろうが・・・


ついでに78ページの「同じ鐵(てつ)を踏ませる」の「鐵」は鉄の旧字体で、これでは鉄の事である。轍(わだち、前の車の通った跡)が正しいのは言うまでもない。


この作者、まあまあ文章力ある人だと思うけど、こういう細かい誤りが残念。
それにもまして問題なのは編集である。誰も気が付かなかったのだろうか。今の出版編集、校正ってここまでレベルが落ちたのかなあ・・・
アスキーという新興出版社だからというのもあるのか、あるいは新潮など一流出版社ならそんなことないのか、でも近ごろは雑誌だけでなく新書など単行本の編集も編集プロダクションに丸投げだったりもするし、怪しいなあ・・・


手元にあるのは初版だし、誰か指摘して直っているのかもな、あやせの手錠のミスは増刷で直ったらしいし・・・と思っていたのだけど、今週放映の、三話のアニメですら直っていないのである。おいおい、どうして誰も教えてやらない!!!!
このナレーションを語る沙織役の生天目仁美さんの声が、ほんの少し戸惑っていたように聞こえたのは気のせいだろうか。


【後記】
そういえば星新一の作品に「くさび」という、たぶん星新一作品でも指折りの不思議な話がある。
妻が想像妊娠していると男性の医者は診断するのだけど、別の女医は順調ですよと言う。どうも女性にしか見えない子供が育っているらしく、産まれてもやはり見えない。
主人公の夫は錯乱して死んでしまう。そしてそのような子供は他の女性にも次々と宿り、新世代の子どもたちが・・・(?)という話。
このタイトルはもちろん「子はかすがい」のはずが、どういうわけか「くさび」になってしまった、という意味で付けられている。


5/21
ASIN:4062836637:image:small
http://www.amazon.co.jp/dp/4062836637/
傷物語』p.316 でも発見した。

僕は、最後の楔を外すことができた。

講談社校閲もこんなもんらしい。というかラノベ業界ではすでに楔は軛のことになっているのか。猫はじきに「ぬこ」になるのか。もはや「すべからく」(リンク先は必読)の誤用を指摘するような時代ではないのかもしれない。
活字の文章というものが、こうまで軽い時代が来るとは。ノベルゲームの世界では文章は400字詰め何枚というカウントではなく「何バイト」という数え方になっているようだし・・・

バッハの自筆譜がwebでかなり読めるようになっていて、驚きというか感激だった。
http://imslp.org/wiki/List_of_compositions_by_Johann_Sebastian_Bach,_by_BWV_number
マタイ受難曲ロ短調ミサ、無伴奏ヴァイオリンなどの自筆譜が見られる。
自筆譜以外でも無伴奏チェロ組曲のアンナ・マグダレーナ写本(自筆譜は失われているので、最も信頼できる一時資料)、ゴルトベルク変奏曲のバッハ生前の印刷初版なども見られる(この時代の楽譜出版は手で銅板にオタマジャクシを彫るので、自筆譜の筆跡がかなり残っている)。
カンタータも旧バッハ全集ながら、ほぼ全曲の楽譜が読めるので、楽譜を見ながら聴く楽しみができた。


そして2/24はバッハ・コレギウム・ジャパンカンタータシリーズ終結の日である・・・
http://www2s.biglobe.ne.jp/~bcj/13.02.24sc100.html

第3番

ワルトシュタインと同じハ長調で、豪壮な曲想が似ているので「小ワルトシュタイン」という人も稀にいるが、当たっている気がする。内容に乏しいという人もいて、特に展開部に工夫が足りないような気もするが、よい曲である。


初期ソナタだが、おそらく月光第三楽章よりずっと難しいと思われる。
初期だからと悲愴の次に手がけたが、難しく長いため非常に悪戦苦闘。
この曲に関する情報がとても少ないため、月光より難しいというのは月光を弾いてみて初めてわかった。


指が疲れる。悲愴第一楽章なども演奏時間はこの曲とそう変わらないのに、この曲はずっと疲れる。
おそらくハ長調であることが大きな理由。ハ長調のため、アルペジオ、和音など相当無理で指に負担のかかる音形が多い。脱力できていないと途中でバテてしまいがち。
私も最近は、この曲の第一楽章をなんとか通しで引けるようになったが、全楽章などとても無理。全楽章弾くピアニストはほんとに筋力、スタミナ、脱力ともすごいんだなと思う。


○難所
★提示部
冒頭三度のトリルからしてすでにこの曲の中の指折りの難所。13-24ではまずこの速さで弾くのは不可能だろうから、23-15または24-15などでとったほうがよい。

息を抜く暇もなく3小節左手10度も、これまた難所。右手スタッカートのためペダルでつなげられない。
ベートーヴェン自身の運指では1-5としているが、手の大きい人でないと無理。当時のピアノの鍵盤幅が狭かったからともいわれる。
私の場合は前にも書いたが、
左手は5でソだけを弾く→シは右手で弾く→直ちにシを左手1に置き換え音を保持する
というやり方で弾いている。これならペダルを使わず左手の音を保持できる。10度はギリギリ届くが他の鍵盤にかすってしまう手の大きさの人にはおすすめ。


5小節以降のポリフォニックな動き。
13小節からの右手アルペジオとオクターブトレモロ。指が疲労する。
56、60小節左手10度はアルペジオでとり、ペダルを使ってもかまわない。その他の10度もスタッカートなどないところはペダルを使えばよい。
61小節からの右手アルペジオ疲労するし白鍵ばかりなので指またぎしにくく、間の和音も外しやすい。


77小節からの両手ユニゾントリル。展開部、再現部でも同様なパターンが頻出。
私はここが一番苦手。ミケランジェリの演奏を聴いたら氏の演奏も微妙に左右ずれていたので、やはり難所なのだと思う。
指使いにはずいぶん悩む。特に黒鍵が入ってくるところ。基本は右手53左手12か? 右手53だとただでさえつらい5がさらに疲労する。


85小節両手オクターブトレモロで、88小節から左手が単音になるのは、当時のピアノの最低音がファだったから。ここから単音にするのがちょっと弾きにくい。現在のピアノなら最後までオクターブを弾けるのだが・・・


★展開部
98小節からのペダルは踏みっぱなしか? ハーフか? 踏まないでつなげるのはきつい。

109小節の第一主題3度トリルは展開部アルペジオ疲労した直後なので、うまく弾けないことが多い。
今まで23-15で弾いていたら24-15にするなど、疲れてない指使いをするなどするとよい。


115小節からのオクターブ跳躍、sfとスタッカート、音の伸びる長さなどややこしいので注意。ペダルを踏む場合はさらにややこしい。

135小節左手10度の和音は右手スタッカートのためペダルで伸ばせないので、何とか端折るしかない。私はシをオクターブ下げて弾いている。最低音ソは再現部前の属音固執音で再現部を呼ぶとても重要な音なので、必ず伸ばす必要がある。

147小節からのオクターブ跳躍も個人的にはかなり苦手なところ。


★再現部、コーダ
再現部の難所も大体同じ。
246小節からのポリフォニックな動きも個人的に苦手。
コーダ、カデンツァは派手だがそんなに難しくはないかも。
228小節から長さが四分音符から三連符に変わるのに注意。
ヘンレ版で232小節カデンツァ後半の上段のファは直前の音が#だが、その後の下段ト音でナチュラルが付いているし、音楽的にもナチュラルで取るのが自然。


こちらも参考になる。
ベートーヴェンソナタ;有名でない名曲たち
http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n67461


☆ピアノ関係の記事一覧
中途でほったらかしている記事もあるが・・・
ソナタ形式のアナリーゼ(楽曲分析)
http://d.hatena.ne.jp/nenemuu/20121022
大人レスナーへのピアノ入門法私案 その2 薬指の動かし方など
http://d.hatena.ne.jp/nenemuu/20121015
大人がピアノを練習するということ
http://d.hatena.ne.jp/nenemuu/20121003
大人レスナーへのピアノ入門法私案 その1
http://d.hatena.ne.jp/nenemuu/20121002
バッハ「インヴェンションとシンフォニア」の練習の進め方について
http://d.hatena.ne.jp/nenemuu/20120929

第14番(月光)第三楽章

嬰ハ短調で黒鍵5つのうち4つを使い、しかも同じ調の(パクリ疑惑もある)幻想即興曲などと違い弾きにくい音形も多いので、とにかく黒鍵でツルツルずっこけ易い曲という感じ。黒鍵滑り止め対策が深刻に必要である。その代わり速いパッセージは弾きやすい調である。


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アトリックスのクリームがいいとか言われる。
それでも滑る人は紙めくりの滑り止め
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を使うという手もある。


○注意点
143小節右手はヘンレ版ではド#ミのみで、注釈でド#ミソ#もあり、としている。ウィーン原典版では譜面でド#ミソ#としている。
53小節からの頭のスタッカートはヘンレ版には全て付いているけど、ウィーン原典版では付いていたりいなかったり。


177小節からのアルペジオウィーン原典版では左手も使う運指にしているが、ヘンレ版では右手のみで弾くように書いている。前者はペダルを使うのが前提なので、個人的には後者の方が良いと思う。
もちろんペダルを使ってもかまわないが、使わなくても響かせられる運指というのが原則ではないかと思う。
どうしても届かなければ仕方ない。


#4つの曲で、ソナタ形式のため転調も多いので、ダブルシャープや白鍵に上がるシャープ(シ#=ドなど)も非常に多い。白鍵を弾くシャープは読み取りにくいので、個人的には○印を付けるとかしているけど、この曲の場合あまりにも多いのでそれは面倒かも。


○難所
やはり53小節からの「ズンチャッチャッチャ」が一番難しいというのが、弾いたことのある人の共通認識ではないだろうか。聴いた感じでは全然難しく聞こえないのが厄介なところ。後半スラーなのも弾きにくい。
「ズンチャッチャッチャ」ではなく「ズンチャッチャーラ」という感じ。スラーでつなげるところの指の負担が重いので、なるべく楽に弾く工夫を。


第一主題のアルペジオのパターンは、黒鍵をテコの力で弾く感じで、聴いた感じよりは難しくない。左手はトレモロをデロデロ弾くだけで楽なので、音量を抑えて下品にならないように。
7小節5-1の指替えが滑りやすい。展開部69-70小節にも同様の指替えがあり。
9小節の左手5で低音を保持するのも、手の小さい人にはきついかも。どうしても難しければペダルでつなげるか。
13小節以降、移行部のアルペジオはかなり弾きにくいパターンで、難所ではないかと思う。16小節5-1指替え、17小節から黒鍵の間の白鍵を弾くところ、19小節からは全て黒鍵なので支点が出来ず滑りやすい。


月光第三楽章は、手の小さい人が苦労する曲としても知られる。
32小節ソ(ファのダブルシャープ)のオクターブで上の黒鍵に上がりトリルというところが、手の大きさ的には最もきつい。薬指は上の方に上げて黒鍵の間あたりを弾くことになるが、このポジションだとどうしても、ソ#の黒鍵に薬指が引っかかってしまう。
親指は一瞬弾くだけで離し、あとはペダルで音をつなげるしかない。10度届く人なら楽なのだろうけど・・・
他の黒鍵から白鍵に降りるパターン2つは弾きやすい。127小節はド(シ#)だが、ドシの間には黒鍵がないので、薬指が引っかからず比較的弾きやすい。


58小節以下の9度プラス間の和音も、手の小さい人にはきつい。
59小節以下の10度アルペジオのパターンでは、手の大きさ的には届く人が多いと思うが、黒鍵を支点とする中指がズッコケやすい。13を同時に押さえながら、3は弾かず1をやや早く弾くという感じで弾いたほうがよい。


最後196小節からのユニゾンアルペジオも厄介。
出だし和音からのポジション替えで、左手ミはウィーン原典版、ヘンレ版とも5でとっているが、5だと手をずらさなければならないので、またいで4で取った方が素早くアルペジオのポジションにしやすいと思う。


○その他で、難所というほどでないけど、そこそこ難しい所は・・・
冒頭ソ#を左右で取り合うところでいきなりつまづく、という人が多いみたい。
こういうパターンは、もちろん打鍵のタイミングをずらすのも大事だけど、なるべく左右の打鍵位置をずらして、うまくすれ違えるようにするのが原則。個人的には右手1は下の方を弾き、左手は2でやや上の方を弾き、ぶつからないようにしている。左手運指は1としている楽譜もあるが、2の方が指が長く細いのでぶつかりにくく弾きやすいと思う。
ウィーン原典版は1、ヘンレ版は2で取っている。あれ、ヘンレ版の運指は意外によい?)
これは難所というほどではないと思う。ていうかこの程度を難所と思う方にはまだ早い曲では・・・


37小節から伴奏のリズムがとりにくい。
中間部、コーダで左手でメロディを弾くところ。
83小節の右手アルペジオ。ヘンレ版では1-5-24-5でとっていて、私もそうしているが、ウィーン原典版では24ではなく13になっている。手の小さい人は前者は難しいので後者がよい。どちらにしろ弾きにくく、二音がずれやすい。
88小節から右手で和音とメロディを弾くところで、右手小指が遠くスラーにしにくい。ペダルを使ってもよいが、まず指の角度を工夫するなどしたほうがよい。
92小節からの右手和音の連続は、慣れないうちはもつれやすい。
コーダ直前158小節の右手アルペジオも弾きにくくずれやすい。
163小節からの異様な音符は、減七でペダル踏みっぱなしでウワーンと響かせる所で、見かけほど難しくない。


○ペダル
ベートーヴェン自身が指示したのはアルペジオの最後の二音と、コーダの減七のところだけで、原典版ではこれらにしかペダル指示が書かれていない。
後はどうするかというと・・・解釈版などを参考にいろいろ工夫してくださいとしか・・・
月光は第一楽章踏みっぱなし説が定説になりつつあるし、かなり踏んでも良いのではと思う。

第17番(テンペスト)

第一楽章しか弾いていないが、月光第三楽章よりは技術的には易しい。
悲愴第一楽章とは、同程度かこちらの方がやや難しいか・・・一般に考えられているよりは、技術面では難しくないと思う。技術より表現上の課題が大きい。


第三楽章は有名すぎるのと一本調子なのとページ数が多いので、どうもなあ・・・とまだ手を付けていない(何でみんな第三楽章ばかり弾きたがるのだろう?)。しかし堂々としたソナタ形式の傑作には違いない。
第一楽章よりやや難しいと言われているが、どのくらい難しいかはわからない。
他にも書いたけど、3つの楽章全てがソナタ形式で書かれている特異な曲で、そのような曲はベートーヴェンピアノソナタには他にない。


○注意点、難所
難所というほどのところはあまり多くないような気がする。弾きにくいなと思うところは結構ある。主に注意点。


74小節以降のアルペジオと和音が左右交代するところで、アルペジオを間違いやすい。個人的にはここが一番難しい。
左右に視線を動かすか、いっそのこと弾きにくい左手だけ見て右手は見ないで弾くか。
視線を動かす場合は動体視力が問われ、歳とともに難しくなるかも。


20小節から右手で伴奏、次の小節で左手に伴奏を置き換えるというパターンが続く。通常片手で弾いてもう片方は交差するのだが、この部分は指を置き換えないと弾けない。
どうにか交差で弾けないかいろいろやってみたがダメだった。楽譜の運指も、よく見るとそうなっている。
交代しても伴奏を一貫して弱く弾くのが難しい。

38小節の減七の和音の指替えは特に難しい。瞬時に和音2つと伴奏2つの4つを押さえるポジションを取らなければならない。どうしても無理な場合は、大きな声では言えないが最初の和音のうち2などを一つ端折るとか・・・


同じ音形でも展開部では右手のみで伴奏し、左手を交差してメロディを弾く。
一般に、交差は左手で伴奏を弾き、右手を左右に動かすことが多いが、ここは右手で伴奏、左手で交差してメロディを弾く。楽譜上そうなっているし、運指もそのように書かれている。ベートーヴェン自身はここに運指を書いていないようだが。
左手伴奏も不可能ではないと思うが、53で和音を連続して弾くなど無理な形とならざるを得ない。やはり右手伴奏がよいだろう。
この展開部の伴奏も98小節以降、白鍵の狭いところを弾くような形で、12-4とトレモロのような形になるけど、音が揃わず音量のバランスが崩れやすく難しい。手首を揺らす感じがよいけど、なかなかうまく行かない。しかもメロディは左手なので伴奏は力まず弱く弾かなければならない。
再現部にはこのパターン(第二主題への移行部?)は出てこない。


122小節からの3度のユニゾンを、両手で揃えて弾くのが難しいし、指を外しやすい。
左手の出だしは4-5-23-5-12-5と、4の下を5でくぐると個人的には弾きやすいが、弾きやすいやり方で。130小節から3度が逆になるのに注意。


再現部142小節以降Largoの幻想的なところ、音の長さがとてもとりにくい。楽譜の読みがとても得意な人、リズム感のある人ならともかく、普通の人はわけがわからなくなってくる。
CDなどの演奏をよく聞いて頭に叩き込むしかないかも。


○余談
再現部第二主題189小節以降、最高音レが固執して続くところがなんとも緊迫感を出していて効果的だが、実は当時のピアノだとファが最高音だったので、提示部と同じくオクターブ進行だと音域をはみ出て弾けないという事情があった。それを逆手に取って音楽的効果を上げている。
同様の例はベートーヴェン10番第一楽章102小節、モーツァルト13番KV333第1楽章の再現部第2主題143小節、162小節、10番KV330第一楽章133小節などにも見られる。


ベートーヴェンの21番ワルトシュタインより前のピアノソナタは、ファ〜ファの5オクターブ61鍵の音域しかなく、この曲や月光ソナタも、たったの5オクターブで書かれている。音域が大きいほうがダイナミックとは限らないのは面白い。