「楔(くさび)」はヒビを入れる道具です。 in俺妹

香織姉さんは、趣味も性格もばらばらだったみんなをつなぎ止めていた楔(くさび)のようなもので、

俺の妹がこんなに可愛いわけがない。」の二期、原作者自身によるサプライズも多く結構面白いのだけど、三話でこんなセリフがあった。上は原作9巻の168ページから引用。
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http://www.amazon.co.jp/dp/4048708139/


69ページにも「理性の楔」という同じ間違いがある。
「楔」は木材とかに打ってヒビを入れる三角の鉄片のこと。つなぎ止めるのでなくヒビを入れる道具である。つなげるのは「鎹(かすがい)」。
「軛(くびき)」は家畜を繋ぎ止める道具。通常「理性の・・・」とくれば「理性の軛」で、「軛」が用いられる。
「子は・・・」とくれば「かすがい」である。まあ世には子が「くびき」にしか感じられない方々もいるのだろうが・・・


ついでに78ページの「同じ鐵(てつ)を踏ませる」の「鐵」は鉄の旧字体で、これでは鉄の事である。轍(わだち、前の車の通った跡)が正しいのは言うまでもない。


この作者、まあまあ文章力ある人だと思うけど、こういう細かい誤りが残念。
それにもまして問題なのは編集である。誰も気が付かなかったのだろうか。今の出版編集、校正ってここまでレベルが落ちたのかなあ・・・
アスキーという新興出版社だからというのもあるのか、あるいは新潮など一流出版社ならそんなことないのか、でも近ごろは雑誌だけでなく新書など単行本の編集も編集プロダクションに丸投げだったりもするし、怪しいなあ・・・


手元にあるのは初版だし、誰か指摘して直っているのかもな、あやせの手錠のミスは増刷で直ったらしいし・・・と思っていたのだけど、今週放映の、三話のアニメですら直っていないのである。おいおい、どうして誰も教えてやらない!!!!
このナレーションを語る沙織役の生天目仁美さんの声が、ほんの少し戸惑っていたように聞こえたのは気のせいだろうか。


【後記】
そういえば星新一の作品に「くさび」という、たぶん星新一作品でも指折りの不思議な話がある。
妻が想像妊娠していると男性の医者は診断するのだけど、別の女医は順調ですよと言う。どうも女性にしか見えない子供が育っているらしく、産まれてもやはり見えない。
主人公の夫は錯乱して死んでしまう。そしてそのような子供は他の女性にも次々と宿り、新世代の子どもたちが・・・(?)という話。
このタイトルはもちろん「子はかすがい」のはずが、どういうわけか「くさび」になってしまった、という意味で付けられている。


5/21
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http://www.amazon.co.jp/dp/4062836637/
傷物語』p.316 でも発見した。

僕は、最後の楔を外すことができた。

講談社校閲もこんなもんらしい。というかラノベ業界ではすでに楔は軛のことになっているのか。猫はじきに「ぬこ」になるのか。もはや「すべからく」(リンク先は必読)の誤用を指摘するような時代ではないのかもしれない。
活字の文章というものが、こうまで軽い時代が来るとは。ノベルゲームの世界では文章は400字詰め何枚というカウントではなく「何バイト」という数え方になっているようだし・・・