セールス面での不利

聴覚的、時間的な芸術であるための困難から派生してもう一つ、セールスの現場で、画像として紹介することが出来ない、試聴が長らく困難だったことが挙げられる。
かつてレコードが高かった頃にはレコード屋での試聴も可能だったようだが、当然買うことが前提だったろうし、あまり沢山聴くこともできない。
(私の記憶でも、1980年代にはもう試聴は出来なかった。輸入レコードなどは輸送中にキズが付くことがあるので盤面を改めることは出来たけど、聴くことはできなかった)


90年代からCDショップのポータブルプレーヤーによる試聴コーナーが充実し始め、より手軽になったが、プレーヤーの台数により、聴ける数が限られているので、売れ筋や店のおすすめ以外は聴けない。
最近はネットで試聴出来るようにもなったけど、全曲まるごと公開したら売れないから、数十秒だけというのが普通だ。
絵画なら写真で見本を見ることが出来るし、画集、イラスト集を立ち読みすることもたいがい出来る。観るだけでは芸術を所有することは出来ないから、著作権は侵害されない。


基本的に「試しに鑑賞する」ことが出来ない芸術であることには、あまり変わりない。
したがって世間の評判がいい、テレビ番組やCMで使われサビが気に入った、といった理由で購入することになる。
セールス面でもやはり消費者は保守的にならざるを得ないのである。
「至高の傑作」か、「カラス避けにしかならない円盤」か分からないものに3000円はたくバクチは、なかなか打てない。


ドラマの主題歌、アニソンなどの放映時は、通常1分30秒程度という制限があり、一番のみの演奏で、前奏間奏後奏などもカットか短く編集せざるを得ない。CMなどはもっとシビアで15から30秒、ヒットチャート番組では5秒くらいしか紹介されない。
いずれも繰り返しはできないから、なるべく耳あたりのいいキャッチーなメロディをサビの部分に持ってくる、特に「聴かせる15秒間」が重要になる。だからここで耳当たりのいい「カノン進行(大逆循環)」
http://dic.nicovideo.jp/a/%E3%82%AB%E3%83%8E%E3%83%B3%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%89
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%8E%E3%83%B3_%28%E3%83%91%E3%83%83%E3%83%98%E3%83%AB%E3%83%99%E3%83%AB%29
を持って来て勝負する例がもう、うんざりするほど多い。


なんだか話がわからないところに行ってしまったが、現代に音楽活動をしている人はあらゆる困難に直面していると思うのだけど、でもまあ、まだまだよい音楽はあるので、ちゃんと売れる、製作者にお金が還元される仕組みを作らないとねえ、ということに行き着くのである。
相変わらず結論が出ずすみません。