右手と左手、ト音とへ音

楽譜は通常上段を右手で、下段を左手で弾くが、例外も多い。L.H.(Left hand)とかm.g.(main gauche 左手)とか記号もあるし、カギカッコで一方の手の弾く範囲を注記している場合もある。指番号もあるし、たいてい常識的に判断できる。m.g.の意味がわからなくても、上の段に書かれているから左手だな、とわかる。

なおgaucheはフランス語で左、不器用な という意味で「セロ弾きのゴーシュ」のゴーシュはここから取った説が有力なようだが、宮澤賢治自身は何も書き残していないので不明。
「不器用なゴーシュの手」と覚えておくといいかも。左利きの人には当てはまらないか。右手はm.d.(main droite)。


上段がへ音になったり下段がト音になったりする場合もある。
というかト音、ヘ音記号はもともとその段の音の音域が何かを示すためにあるもので、上がト音、下がへ音と決まっているわけではない(決まっているのなら、そもそも記号を書く必要はない)。曲の創りによって変わってくる。モーツァルトなど高い音域を多く弾く曲は左手もト音のことが多い。
(ト音は下から2本目の線がト=ソという指示、へ音は上から2本目の線がヘ=ファという指示)
上がへ音、下がト音と逆転する場合は、手を交差して弾くことになる。
次の段からト音、へ音が変わる時は一番右終わりに予告記号が書かれる。


他にアルト記号(ハ音記号)というのもあるがピアノでは使われない。記号が示す線がハ=ドという記号だが、決まった位置がなく移動するのが特徴。
(かつてはト音やへ音も移動することがあったらしいが、現在はないし、過去のそのような楽譜も、書き直されて出版されるのが普通)
現在もヴィオラや声楽で用いられる。モーツァルトの頃までは鍵盤楽器も自筆譜では上段はハ音記号で書かれていた。バッハの自筆譜もハ音だが、現在の楽譜は原典版を含め、ト音に書き直されている。