『星の王子さま』の著作権消滅と原画について

今回出た新訳は、いずれもイラストを著作権継承者(消滅まで継承してた人)の許可を得て使用している。まあ当然それなりの使用料も払っているだろう。

でもそれでは著作権消滅の意味がないのではないか?
http://www.lepetitprince.net/sub_newstopics/licence.html
によると、『星の王子さま』のイラストは、「意匠権」「商標権」という形で強引に権利を継続しているようなんだけど。


そもそも著作権はCopyright「複製権」なのだけど、書物と違って劣化コピーしか出来ない絵画の原画の複製権をどう取り扱うか、難しいところだ。
著作権法でも、美術の著作物については、著作者だけでなく所有者にも特別な権利を認めている。


http://www.cric.or.jp/db/article/a1.html

(美術の著作物等の原作品の所有者による展示)
第四十五条 美術の著作物若しくは写真の著作物の原作品の所有者又はその同意を得た者は、これらの著作物をその原作品により公に展示することができる。

以降、第四十七条まで。
だが、著作権消滅後の取り扱いについては特に記述がないよう。別に原画所有者には、誰でも使えるように公共の場に公開しなければならない義務があるわけではないし。
著作権が消滅しても、原画を持っている人が「イヤだよ、見せないよ。欲しければお金払って」と言えばそれまでである。


そういうわけで、現状では「原画を持っている人勝ち」という状態のよう。
星の王子さま』に限らず、著作権の消滅した、絵本やイラスト入り児童書(のうちイラストが重要な役割を占める作品)などでは、既製本のイラストをコピーして売っても、基本的には権利上の問題はないみたいなんだけど、画質は当然悪化するわけだ。


漫画についても同じことが言えそう。今のところ著作権の消滅した著名な漫画家はあまり思い浮かばないけど(戦前の漫画家くらい)、もう何十年か経つと問題になってきそう。
いわゆる「手塚以降」の漫画家だと、福井英一が2004年に著作権消滅しているようだけど、原画の問題はどうなっているのだろう? 当時はまだ「描き版」(彫り師の人が銅版に手作業で製版する)が主流だったようだけど。


そもそも漫画は原画が紛失たり劣化したりしている作品も多いし、デジタル画像として取り込まれたものが正版になっているケースも最近は多いみたいなので、絵画やイラストのような問題は生じにくいのかな。
まんだらけ」などで著者の知らないうちにオークションにかけられていたりするケースもあるようだけど。


この辺の問題、もう少し調べてみたい。