今だに

nenemuu2004-11-04

これは以前にも書いたかもしれない。
だいぶ前から、「未だに〜している」のように「未だ」を肯定形で使うのは間違いではないかと、疑問に思っていた。「未」は否定の再読文字「未だ〜せず」だから、肯定の意味にはならないからだ。だから肯定形では「今だに」(「だに」は「今」の強調。「今でさえ」の意味)を使うべきではないかと。
けどワープロでも変換されないし、辞書にも載っていない。私の方が間違っているのだろうか・・・と考えながらも、やはり納得が行かないので肯定形の時は「いまだに」と平仮名で書き「未だに〜している」は使わないようにしてきた。


呉智英の『言葉の常備薬』 ISBN:4575297364 にこれが取り上げられていた(p.180)。それによるとどうも、「未だに」を肯定で使うようになったのは、割と最近のことらしい。夏目漱石の『坊っちゃん』の冒頭でも「今だに」が使われているそう(忘れてた)。『大言海』(昭和初期の国語辞典)でも「語釈で『今、だにノ略』とする」だそうだ。
やっぱり間違っていなかったのか。けど新解さんでも「今だにとも書く」と書かれているのには、この辞書を持っていながら"未だに気が付かなかった"。私の持ってる第四版でも確かめたら、ちゃんと書いてある。


青空文庫坊っちゃんhttp://www.aozora.gr.jp/cards/000148/card752.html

親類のものから西洋製のナイフを貰って奇麗な刃を日に翳して、友達に見せていたら、一人が光る事は光るが切れそうもないと云った。切れぬ事があるか、何でも切ってみせると受け合った。そんなら君の指を切ってみろと注文したから、何だ指ぐらいこの通りだと右の手の親指の甲をはすに切り込んだ。幸ナイフが小さいのと、親指の骨が堅かったので、今だに親指は手に付いている。しかし創痕は死ぬまで消えぬ。

確かに。