「星の王子さま」新訳書名で要望書 岩波書店

http://www.asahi.com/culture/update/0623/001.html

星の王子さま」の原題は「小さい王子」。岩波書店が1953年以来独占的に出版してきたが、日本での著作権が今年1月に切れたため、さまざまな出版社が新訳本を予定している。論創社版は今月出版された。

岩波書店の宮部信明編集局部長は「基本的には、新訳にふさわしい別の書名をつけるべきだと考える。それでも『星の王子さま』を使いたい場合は、先人の創造的な営為に対する敬意を示してほしい」と話している。

星の王子さま (RONSO fantasy collection)
問題になった論創社

検索してみると、あらいつの間に、すごくたくさん出ている。

新訳 星の王子さま
倉橋由美子訳 宝島社

新訳 星の王子さま
小島俊明訳 中央公論新社

星の王子さま (岩波少年文庫 (001))
長年の定番、内藤濯訳 岩波少年文庫
うちの実家にあったのはこれの旧版でハードカバー、箱入りのもの。

星の王子さま―オリジナル版
近年定番になりつつある、同じく内藤濯訳、オリジナル版


ネームバリュー的には、倉橋由美子かなあ? 池澤夏樹訳ももうじき出るとか。
この際原題通り『小さな王子さま』で出してもいいと思う。みんな同じ題ではセールス的にもうまくいかないと思うし。
「聖書や資本論に次ぐロングセラー」かあ・・・
http://www.lepetitprince.co.jp/top_top.html
公式HPもあるんだ。グッズとかで結構儲けていそう。


http://www.lepetitprince.net/sub_copyright/LPPcopyright.html
没後50年で著作権が切れなかった特殊事情について。
さらにhttp://www.lepetitprince.net/frameset.html
トップからたどると、この作品の印税をめぐるいろんなゴタゴタについて書かれていて面白い。
上記公式に対して下のページは批判的なようだ。そもそも公式を名乗る根拠自体にも疑問を投げかけているよう。


なるほど、これがあの「戦時加算」かあ。著作権講習会で習った記憶がある。


フランスではさらこんな特殊事情があるとか。

1948年4月、サンテグジュペリは「祖国のために死んだ」と正式に認定されました。フランスの法律によって、フランスの作家がフランスのために死んだ場合、その著作権(死後70年)は30年間延長されることになっています。したがって、少なくともフランス国内では、彼の著作権2043年(1944年死亡ならば2044年)12月31日まで保護されます。

フランスではまだ当分著作権が存続するけど、日本国内では外国の著作物でも日本の著作権法が適応される、と。したがって50年+戦時加算が終了した今年で消滅、と。
※保護期間が短い国の方を適用、の誤りでした。どっちにしても日本の50年が適用されるわけですが。


原作の日本における著作権は消滅したけど、翻訳著作権は内藤氏の遺族にあるから、『星の王子さま』という訳も著作物に該当すると。まあ法律論から行けばそうなるわけだ。
でもちょっとせこいような気がするなあ。『星の王子さま』のタイトルはもはや共有財産ではないのか。
日本の保護期間である「死後50年」は、もう国際的には短い方になっているのかな。でもアメリカのように「ミッキーマウス保護法」などと揶揄されるように、ロビー活動やら既得権やらの欲望渦巻く世界になってしまうのも、何だかなあと思う。


しかし、来年あたりの図書館採用試験で出そうなトピックですなあ(笑)。


人間の土地 (新潮文庫) 夜間飛行 (新潮文庫)
それにしても『星の王子さま』を読んだ人のうち、『人間の土地』や『夜間飛行』を読んだ人ってどのくらいいるんだろう。
最近改版して、カバーが宮崎駿のイラストになり、『人間の土地』の解説も宮崎氏が書いたので、ちっとは読者増えたかもしれないけど。
訳は以前のままの堀口大学なんだけど。
『人間の土地』は高校生の時読んで、ひどく難解だった印象が残っている。『夜間飛行』は読みやすかった。どちらも読んで損はないと思う。